高校生が本気で選ぶ文学賞!『高校生直木賞』候補作を読んでみよう
高校生が選ぶ『高校生直木賞』って知ってる? 直近一年の直木賞候補作から絞られた候補作を読んだ全国の高校生が集まって、議論して「今年の1作」を選ぶもの。読書好きなコなら参加してみたいよね!?
全国の高校生がガチで話し合って選ぶ!「今年の1作」
全国の高校生が本気で選ぶ『高校生直木賞』。今年は新型コロナウイルス感染拡大の状況から4月末に行われる予定だった全国大会が延期に。新たな日程が発表になるのを待ちつつ今年の候補5作を読んで、みんなも「自分だったらこれ!」な作品を選んでみない? また『高校生直木賞』の公式ホームページ(http://koukouseinaoki.com/index.html)では、過去の選考の様子や今年参加する学校の情報、さらに今年の候補作の著者5人から寄せられた『高校時代に読んでほしい本』も。「来年は参加してみたい!」ってコは「参加方法」もチェックを。
【候補作①】「大人の恋愛」ってこういうもの!?
主人公は50歳になる青砥。親の介護のための引っ越し、離婚、転職を経験して地元・埼玉に住む青砥は、体の不調を感じて病院で検査を受けることに。その病院でばったり再会したのは、中学時代の青砥が告白してフラれた須藤! それから2人はたびたび会うように。でも須藤の病気がわかって……。人生いろいろ経験した後の「大人の恋愛」ってこんな感じ!? 10代の恋愛と共通するところもあるけど、うちらの恋愛にはない深さ、熱さ、切なさに胸をつかまれます。
『平場の月』朝倉かすみ ¥1600/光文社
【候補作②】芸術の世界の「渦(うず)」をリアルに感じる!
舞台は江戸時代の大坂・道頓堀。実在した浄瑠璃作家・近松半二が主人公。儒学者の穂積以貫を父に持つ成章は、みんなから将来を期待される賢い子どもだったけど、人形浄瑠璃好きな父と劇場に通ううち、その世界にのめりこむ。やがて浄瑠璃作家の道に進むけど、なかなか周りからほめられるような作品が書けず苦しむことに! 芸術の世界に渦巻く人の想いが描かれていて、人形浄瑠璃にも興味がひかれちゃう♡
『渦 妹背山婦女庭訓魂結び』大島真寿美 ¥1850/文藝春秋
【候補作③】SF的な設定に引き込まれる短編集
日本SF大賞の受賞経験もある作家さんだけに、ちょっと現実離れした設定にグイグイひきこまれる! 今はすっかり落ちぶれたマジシャンがタイムトラベルに挑む『魔術師』、音楽が通貨になっている小さな島の伝説を探る『ムジカ・ムンダーナ』、ファッションとカルチャーが絶え果ててしまった未来の世界を描く『最後の不良』など6編を収録。
『嘘と正典』小川哲 ¥1600/早川書房
【候補作④】「自分」は何者か?熱い思いがこみあげる
北海道の北側にある樺太島。ここで出会ったのは開拓使に故郷を奪われたアイヌのヤヨマネクフと、リトアニア生まれで皇帝の暗殺計画に巻き込まれたブロニスワフ・ピウスツキ。突然自分が生まれたときにあったのとは違う文明を押し付けられて、アイデンティティを揺るがされた経験を持つ2人が見つけるものとは。歴史の授業で習った北海道のこと、ロシアや東欧のことが、2人の生きざまを通して立体的に見えてくるはず。
『熱源』川越宗一 ¥1850/文藝春秋
【候補作⑤】本当の幸せな「女性の生き方」って何だろう
みんなは自分の10年後、20年後って想像したことある? じゃあ50年後は?? この小説で描かれるのは1964年の東京オリンピックの年に同じ出版社で出会った鈴子、登紀子、妙子の50年の半生。「恋愛、仕事、結婚、子ども」生きていくうえで手に入れたいものはいくつもあるけど、そのうち3つしか手に入らないとしたら……。鈴子、登紀子、妙子はどれを選んで、どんな半生を歩んだのか?「幸せ」について深く考えるきっかけに。
『トリニティ』窪美澄 ¥1700/新潮社
構成/古川はる香