
【ST図書室】<第2回>新しいことを始めたいときに読んでみて!
春が来て「今年は本読みたいな」って思ってるコ、集合! STセレクトの「こんな気分のときにハマる本」を紹介する『ST図書室』。第2回は、進級&進学シーズンに新しいことを始めたいみんなの背中を押す本を集めてみたよ。図書委員ST㋲は、河村ここあが担当。今の自分のキモチにぴたっとくる一冊に出会えますように♡
スイーツは私たちに前へ進む勇気をくれる!

インドのニンジンを使った“ガジャルハルワ”、スぺインのほろほろ崩れる焼き菓子“ポルボロン”、おもちの中につぶあんを入れてきな粉をまぶした京都の“麦代餅”……。世界には、きっとまだ知らないスイーツがたくさん。そんなスイーツを通じて描かれるのは、京都で出会った日本人女性とインド人男性の恋のゆくえ、香港に暮らす日本人マダムとフィリピンからやってきたメイドとの友情など、いろんな年代の女性たちの恋愛、友情の物語。甘いものを食べると、気持ちがちょっとだけ前向きになることってあるよね。この連作短編集で新しいスイーツ、新しい一歩のきっかけと出会って!
『私たちのおやつの時間』咲乃月音
¥850/宝島社
時代を超えて、つながる女性たちの強い思い

今では当たり前のように女性が活躍している職業も「女性がやるなんて!」と言われた時代が。アニメを作る仕事もそのひとつで、この小説ではアニメ制作にかかわる2人の女性が描かれていくよ。ひとりは20世紀はじめの頃にアメリカで作られたアニメーション会社、スタジオ・ウォレス社に入社したレベッカ。男性ばかりの環境で実力を評価されない日々が続くなか、仲間と協力して作品づくりをしていたけれど、第2次大戦の影が忍び寄ってきて……。もうひとりは現在のウォレス日本支社で働く契約社員の真琴。偶然見つけたデザイン画から、才能があるのに歴史から忘れられた「彼女」たちの人生を知ることに。時代が変わっても働く女性を取り巻く環境は変わらない世界を描いているけど……それに負けない強い思いに刺激をもらえそう!
『魔法を描くひと』白尾 悠
¥2145/KADOKAWA
これから出会う恋のイメトレに!?

人気の作家さんが描く4つの恋愛ストーリー。吹奏楽についての小説を書き続けているオザワ部長による『チョコレート・ダモーレ』には、部活内恋愛禁止など厳しいルールがある高校の吹奏楽部が舞台の物語。恋愛嫌い&チョコ嫌いの部長・杳介はトランペット奏者の転校生・岬に心惹かれてしまい……。ほかの作品も「見た目問題」「不登校」「複雑な三角関係」と、みんなにとって身近なテーマ&設定で、するっと入り込めちゃう。これからスタートする環境で、恋愛への期待感も盛り上がりそう!?
『Sweet & Bitter① 恋に正解ってある?』佐藤いつ子、高杉六花、額賀 澪、オザワ部長
¥1650/岩崎書店
誰もが自分の人生の「主人公」!

韓国の作家さんが書くのは、50人の登場人物があやとりみたいにすれ違ったり、重なり合ったり、結び合ったりする連作短編集。1998年に出版されてから、たくさんの人に愛されて読み継がれた作品が、さらに磨きをかけて[新版]として再登場したよ。ある人が主人公の物語でキーパーソンとなる人が、別の物語で主人公になっていたり。リアルな世界でも、こんな感じでそれぞれの人生にドラマがあるんだよね。読んでいくと、共感できる登場人物と出会えるはず。
『フィフティ・ピープル[新版]』チョン・セラン(著)、斎藤真理子(翻訳)
¥2420/亜紀書房
あたたかく応援してくれる「言葉」が支えに

作家・辻村深月さんが『毎日小学生新聞』で連載していたエッセイが一冊の本に。7月に映画が公開される『この夏の星を見る』や『かがみの孤城』など10代を主人公にした作品もたくさん書いてる辻村さんだから!? 小学生に向けて書いているはずなのに、JC・JKにも刺さる言葉がいっぱい。友達との関係、好きなものとの向き合い方、新しい環境に飛び込むことなど、みんながぶつかりがちな出来事について辻村さんの経験や考えを読んでいると「そのままでいんだよ」と、あたたかく見守ってもらっているような気持ちに。
『あなたの言葉を』辻村深月
¥1540/毎日新聞出版
【今回の図書委員:河村ここあ】新しい出会い、新しい挑戦をするみんなに勇気をくれる作品

カバヒコは公園にあるカバの遊具なのですが、人ではないものだからこそ、ここに来る人が自分の本音を吐き出せて、自分自身を見つめるきっかけになるんだと思います。私は「これが一番いい解決策だから自分が我慢すれば……」と思ってしまうことがあるのですが、カバヒコに出会った人は「こういう目線もあるのか」という新しい考え方を発見していて、無理に一番の解決策を選ばなくても、人それぞれいろんな解決の仕方があるんだなと思え、心がとても楽になりました! 新学期は新しい出会いや新たな挑戦も多いと思います。なかなか一歩を踏み出せない人にも、踏み出す勇気をくれる本です!
【あらすじ】
新築マンションの近くにある公園。そこに置かれた古びたカバの遊具には「自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復する」なんて都市伝説があって、「リカバリー・カバヒコ」って呼ばれてるとか……。進学をきっかけに成績が落ちてしまった高校生、駅伝がイヤでケガをしたと嘘をついた小学生、ストレスから不調が起きて仕事を休んでいる女性など、マンションに住む人たちがやってきて、悩みをカバヒコに打ち明けます。何も話さないし動かないけど、カバヒコが痛みに寄り添ってくれることで、それぞれに変化が。ほっこり癒される短編集。
『リカバリー・カバヒコ』青山美智子
¥1760/光文社
構成・文/古川はる香