
JK&専門家#Metoo座談会

強い「NO」がセクハラ防止に!

荒井 男子のボディタッチが気になっています。髪の毛をさわられたり、肩に手を回されたり。親近感の表れかもしれないから、強く「やめて」と言えません。
金田 私も、すごくイヤ。これって、セクハラなのでしょうか?
先生 じつは日本では、どんな行為がセクハラに値するか、法律で定められていないんですよ。大人でも何がセクハラなのかわからない、という人が多いんです。
富所 そうなんですか! びっくり。
先生 セクハラの定義を挙げるならば、相手がイヤだという意思表示をしているのに、体をさわったり、性的な発言を続けること。これには刑法の対象になる強姦から下ネタまで、幅広い事柄が含まれます。こういった行為をされたら、きっぱり「やめて!」と言いましょう。
荒井 断ったら嫌われるかも、っていう心配があるのですが……。
先生 言いにくいよね。でも断らないと〝受け入れている"と勘違いされて、行為がエスカレートする可能性が高いです。「女性は性的なことを素直に受け入れることが恥ずかしいから、建前で断る」という男性の間違った認識が、日本に限らず海外でも問題視されているの。そもそも、イヤな行為をしてくる相手と、今後も仲良くする必要はないでしょう?
池田 確かに、そのとおりですね。
先生 男性は拒否されていると知らずに、セクハラを続けてしまう。相手を傷つけたくないからキッパリ断らない、という女性が多いのですが、じつはきちんと断ることが、本当の優しさなんですよ。
本宮 断っても行為が続く場合は、どうすればいいのでしょうか?
先生 先生や親に相談してみて。そこから教育委員会に訴えたり、男女共同参画センターに相談したりと、自分に合った対処法を調べていきましょう。
富所 先日学校で、女子が先生からセクハラを受けている場面を目撃しました。変にしゃしゃり出るのもよくないかと思い、何もできなかったのですが……。
先生 勝手に行動しないことは、正解です。まずは、きちんと話を聞いてあげることが大事。「傷ついた」「怖かった」という体験談を、疑ったり否定したりせずに、受け入れてあげてください。話すこと自体がつらいのに、それを否定しては絶対にだめ。そして今後、どうしたいかを聞いてみて。ちなみにみなさんは、保健の先生を信頼していますか?
荒井 はい! すごく親身になってくれるので、何でも相談できます。
木村 カウンセラーの先生が週に一度来てくれるので、その先生に相談することが多いです。
先生 よかった。保健の先生やカウンセラーの先生に相談する際、立ち会ってあげることも、心強いサポートになります。
「被害者が悪い」はおかしい!

池田 セクハラを受けないために、何か女性も気をつけるべきことはありますか?
先生 わいせつ行為の加害者にとったアンケートの結果で、被害者を選んだ理由で最も多かったのが「弱そうだから」「抵抗しなそうだったから」。メディアで言われている服装やメイクなどは、セクハラを受ける原因にならないのです。つまり、セクハラを防ぐことはできませんが、受けたときに「NO」と言える強い心を持てば、再発を防ぐことができます。
木村 私は満員電車で痴漢にあうのがイヤで、電車の時間を早めました。
先生 男性と同じ金額を払って電車に乗っているのに、女性ばかりが不利益を被らなければいけないのは、おかしな話ですよね。みんな、「夜道、痴漢に気をつけろ」っていう看板、見たことない?
一同 あります!
先生 社会的には受け入れられているけど、これって本当はすごく変なのよ。なぜ女性が、痴漢にあわないよう気をつけなければいけないのでしょう? 男性に対して、痴漢をするな!と言うのが普通ですよね。これを私は、〝被害者落ち度論"と呼んでいます。被害者にも落ち度があると認めることは、加害者を許していることと一緒なんです。
セクハラの解説には社会を変えること必須
木村 セクハラのニュースを見ていても、女性側の意見があまり取り上げられないのが不思議だな、と感じていました。
先生 そのとおり。男性優位な日本の社会では、男性の意見が圧倒的な多数を占めるからです。男性の〝被害者が悪い"という意見が正しいことのように報じられると、女性も知らずのうちに影響を受けてしまう。多数の意見に従ったほうが、安全な気がするでしょう? セクハラの被害者を同性が批判するという現象も、これが理由。少数派の意見に同調することは、簡単ではないからね。
金田 考えていたよりも、ずっと複雑な問題なんですね……。
先生 「世界経済フォーラム」が世界各国において、経済、教育、政治、保健の4つの分野から男女格差をはかったデータを発表しました。平等な国から順にランク付けしたところ、日本は144か国中114位でした。賃金の差が大きく、女性の管理職・政治家の数が少ないことが、大きな原因です。どうして男性と同じ勉強をし、一緒に働いているのにもかかわらず、女性は偉くなれないのか。そこには女性を活躍させまいとする、男性本意な社会の構造があるのです。女性が男性と同等にお金を稼げるようになったら、男性に従わなくなりますから。
木村 以前、委員会に立候補したのに、女だからという理由で断られました。
先生 それはひどい性差別ですね。大人の意見は正しい、と受け入れがちですが、鵜呑みにしてはだめ。疑問を持ち、立ち向かう勇気を持って。
池田 地位が低いと、声を上げたくても上げられない、という状態が続いてしまいますよね。それを変えるためにも、女性も勉強を頑張ることが大事だなって。
先生 まさにそうなんです。発言力を持つ管理職や政治家の女性の割合が増えれば増えるだけ、女性の声が強くなる。〝セクハラ"という問題を単体で見ると解決法が見つかりにくいけど、こうやって全体の構造をきちんと理解すれば、何をするべきか、明確になるはず。
荒井 なんだか、希望が出てきました!
先生 現状には満足していませんが、私が学生だったときと比べると、着実に進歩しているのも事実。最後に、みなさんに知っておいてほしいのが、結果を出すためには、一緒に訴える人数が多ければ多いほど有利になるということ。スウェーデンでは性犯罪者が無罪判決を受けたときに、何十万人という女性が大規模デモを行い、その結果、国は刑法を変えました。この事例は「#MeToo」運動にも生かすべき。みんなで力を合わせれば、大きなパワーを生むことができる。みんなの意識が変われば、社会が変わる。外国の女性ができることは、日本の女性にもきっとできる。未来を担うみなさんに、ぜひとも頑張ってほしいです!
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