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【バレンタイン× SDGs】みんなが幸せになるチョコレートと未来の話
今日はバレンタイン。お店にはチョコレートがたくさん並んでいるよね。みんなは誰かにチョコをあげる予定? 甘くておいしいチョコレートだけど、今、チョコレートの原料であるカカオの生産に危機が訪れていて、いろんな人が持続可能な生産ができるように、対策を考えているんだって。ちょっとその世界を覗いて、チョコレートについて考えてみない?
- カカオを巡る問題って知ってる?
- どうして子どもが働かなくてはならないの?
- フェアトレードって何?
- 【1】『ロッテ』が取り組んでいること
- 【2】国際協力NGO『ACE』が取り組んでいること
- 【3】NPO『フリー・ザ・チルドレン・ジャパン』が取り組んでいること
- みんなが幸せになるチョコレートがいいよね!
カカオを巡る問題って知ってる?
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チョコレートに欠かせないカカオは中南米原産の植物で、現在は西アフリカや東南アジアでも育てられているよ。赤道を中心に北緯20度から南緯20度の間が育ちやすい気候で、そのエリアは「カカオベルト」と呼ばれているよ。
日本でチョコレートの産地として有名なガーナ共和国(通称:ガーナ)もそのエリアにあって、なんと日本に輸入されるカカオ豆の約7割はガーナ産※1。 けれど、決して裕福な国ではなく、農家の貧困や児童労働、気候変動や森林破壊、さらには鉱物採掘による土壌汚染などさまざまな問題を抱えているんだって。この記事では『児童労働問題』と、その解決のための『フェアトレード』について説明していくね!
※1 参照元/ACE公式サイト
どうして子どもが働かなくてはならないの?
『児童労働』の問題とは、学校に行かずに長時間働くことを余儀なくされる子どもたちがいるということ。
開発途上国では、家庭の収入が低く食事や医療を十分に受けられない場合、家族全員で現金収入を得られる産業で働かざるを得ないことがある。そうした産業の一つがカカオの生産なんだよ。さらに、子どもが親元から離され、家族と離れた場所で働かされることもあるんだって…。
カカオ生産者の経済状況はこうなっているよ
カカオ農家の収入が低くなってしまうのは、カカオが安く売られていることと、生産性の低い農業がおこなわれているから。そもそも安くしないと買ってもらえないから、安く売る。だけど、安く売っていると子どもたちを学校に行かせる余裕がなかったり、新しい知識を身につけたりよりよい農法を試したりする余裕がないから、結果として、子どもが働かざるを得なくなる。そんな悪循環が起きているんだよ。
この事態をなんとかしようという取り組みから生まれたのが『フェアトレード』という考え方だよ。
フェアトレードって何?
『フェアトレード』とは、直訳すると“公正な取引”のこと。カカオ以外の生産物でも取り組まれている概念で、作り手に対して適正な価格で取引をしようという考え方だよ。商売の取引では、どうしても買い手である大きな会社が優位になりがち。「これだけ買うから、この値段でお願い」と言われると、断るのが難しくなってしまうよね。
でも、お互いに公正な取引ができなければ、持続可能とは言えないよね。生産者がきちんと生活できる価格を設定し、児童労働だけでなく、例えば森林破壊や土壌汚染といった問題にも対応していく必要がある。それは、買い手側の責任でもあるんだよ。今ではフェアトレードを認証する機関もあるし、認証がなくてもフェアトレードに取り組むことはできるから、そうした努力をしている企業や生産者は、ぜひ応援したいよね!
児童労働を撤廃しよう、フェアトレードに取り組もう、という動きがチョコレート産業全体の取り組みになってきている中で、企業や団体はどんな活動をしているんだろう?次からは具体的な取り組みを紹介していくよ。
【1】『ロッテ』が取り組んでいること
JKにお馴染みのロッテも、児童労働撤廃に向けた取り組みをしているよ!
はじめに紹介するのは、JKのみんなにも馴染みのある『ロッテ』。中でもチョコレートの「ガーナ」は有名だよね。多くのカカオをガーナから輸入しているよ。
ロッテでは、児童労働問題を解決するために、調達先の農家に対して児童労働モニタリングシステム(CLMRS)を導入しているんだって。学校に通うことの大切さや児童労働の定義についての啓発からスタートし、調査員が定期的に農家を訪問。そこで、家族構成や生活環境、子どもたちの就学状況を確認して、もし児童労働が確認された場合その場で指導を行い、状況を継続的にモニタリングし、地域に合わせた対策を進めているよ。
例えば、水汲みを担う子どもたちの労働を減らすための井戸の寄付や、教員がいない学校を再建するために教員住居を建設するなど、具体的な支援が行われているよ。
ロッテは持続可能なサプライチェーンの実現に向けて、カカオの生産〜輸入までの工程を可視化して、生産地が抱える課題を解決するための支援を行っているよ。そうやって調達したカカオを「ロッテサステナブルカカオ」と名付けて、調達割合を増やす取り組みをしているんだって。
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提供/https://www.lotte.co.jp/
病気や高齢のカカオの木を新しくするために苗木を配布。
なんと、2025年度までにガーナから調達するカカオのすべてが、2028年度までには他の国から調達したものを含むカカオすべてが「ロッテサステナブルカカオ」になる予定なんだって。すごいね!
カカオ関連企業と手を取り合って、生産性を上げるための新しい取り組みも
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提供/https://www.lotte.co.jp/
カカオの実の外殻。硬い外皮と白い果肉に包まれているタネの部分を利用しているよ。
さらにロッテは、カカオの外皮由来のバイオ炭が農業に役立つかどうかを、ロッテを含むカカオ関連企業4社共同で評価試験をスタートしたんだって。同じカカオの畑からもっとカカオが採れるようになると、生産性が上がるから、期待したいよね♪
【私たちにできることは?】
「このような取り組みを応援するにはどうしたらいい?」というSTからの質問に、こんな回答をもらったよ。これなら私たちでもすぐにできそうだね!
「当社をはじめ、各チョコレートメーカーはさまざまなカカオ生産地支援の取り組みを始めており、それをホームページなどで公開しています。ぜひ、そういう情報を調べて、良い取り組みだと思う企業があればその商品を購入したり、SNSで拡散したりと、応援してくれるとうれしいです。若い世代が企業のそういう情報に興味持って応援することで、応援していただいた企業ではよりカカオ生産地の支援に取り組みを進めやすくなり、良い循環が生まれます。」
【2】国際協力NGO『ACE』が取り組んでいること
児童労働の撤廃に向けて「スマイル・ガーナ プロジェクト」を実施しているよ!
次に紹介する『ACE(エース)』は、児童労働の撤廃と予防に取り組んでいる団体だよ。2021年の推計で、世界では1億6000万人もの子どもが児童労働しているんだって※2! カカオの生産地ガーナで、危険な労働にさらされている子どもたちを守って、教育を支援する「スマイル・ガーナ プロジェクト」を行っているよ。
※2 ILO/UNICEF推計、2021年(参照元/ACE公式サイト)
児童労働が当たり前の世界では、それが良くないことであるという認識がないことも多いみたい。親や地域のおとなたちは「貧しい家の子どもが働くのは仕方のないこと」と諦めていて。だから、ACEでは村の人たちに児童労働や子どもの権利について伝えるところから活動をしているよ。
単に「学校に行った方が良いよ」と言うだけでなく、学校に通っていない子どもを見つけたら支援したり、貧しい家庭には学用品や制服を支給したりしているんだ。そして、住民と協力して学校給食の運営もしているよ。「ご飯が食べられるなら学校に行かせよう」という家庭もあるから。
一度も学校に行ったことがなく、友だちと遊ぶこともなかった…そんな子どもたちが学校で友達と一緒に学び、遊び、夢を見つけることができるようになったのはうれしい変化だよね!
農業の訓練をして、生産者の収入を増やす支援もしているよ
もちろん、児童労働に頼らなくても生活していけるよう、家庭の収入を増やすためにカカオの農業訓練もしているよ。積極的に学校へ行く子どもたちを見て、家計のやりくりを学んだり、農業の仕事を協力し合うようになったりと、大人たちにも前向きな意識の変化が生まれているんだ。ACEは、これまでガーナの12の村で活動し、627人の子どもたちを児童労働から解放、そして4,500人以上の教育環境を改善してきたんだって!
JCやJKなど若い世代にこういった取り組みを知ってもらうために、SNSでの発信のほか、学校への出前授業や若者向けのイベントの開催もしているみたい。もし、学内のイベントで外部の講師を呼ぶような機会があったら、先生にACEを提案してもいいかも♪
【私たちにできることは?】
ST読者のみんなに、こんな言葉をもらったよ。ぜひ考えるきっかけにしてみてね。
「サステナブルな取り組みをしている商品を選ぶことが、応援することにつながります。チョコレートを通じて、遠い世界で起きている児童労働の問題と日本の私たちがつながっているということ、現地で何が起きているのかをよく知ること。そして、現地の状況を変えていくために、チョコレートを食べる私たちには何ができるかを考えてもらえたらうれしいです。」
【3】NPO『フリー・ザ・チルドレン・ジャパン』が取り組んでいること
中高生とフェアトレードなチョコレートを作っているよ!
児童労働があることにショックを受けたカナダの12歳の少年が始めた団体『フリー・ザ・チルドレン』のパートナー団体として、1999年に設立された『フリー・ザ・チルドレン・ジャパン』(以下、FTCJ)。貧困や差別から子どもをFree(自由)にし、「子どもには世界を変えられない」という考えから子どもをFree(自由)にするというミッションで活動をしているよ。
フィリピン、インド、ケニア、エクアドル、コンゴ民主共和国では、児童労働を予防するために、貧困家庭への収入向上支援や子どもたちへの教育支援を行っているんだって。また、フィリピンでは路上や性産業で働く子どもたちの保護や自立支援も行っているんだそう。
カカオに限らず、さまざまな農業の持続可能な手法の研修や、手工芸の生産支援など、フェアトレードに向けた取り組みが進められているよ。その結果、子どもたちが高等教育を受けて、より高賃金で安定した職業に就けるようになったんだよ。また、以前は土地を持っていなかった農家の生産者たちが協力し合って土地を所有し、管理できるようになり、収入だけでなく、自分たちの尊厳も取り戻すことができたんだって。
FTCJでは実際に、中高生と寄付付きフェアトレードチョコ「Congo Bonheur(コンゴ ボヌール)」を開発して販売しているよ。カカオや砂糖、バニラなど材料はすべてフェアトレードのものを使っているんだって。
寄付されたお金は、中央アフリカのコンゴ民主共和国の農村地域での農業支援や収入向上プロジェクトに使われるよ。コンゴ民主共和国は豊かな熱帯雨林がある一方で、希少金属のレアメタルがあるために、長年紛争が起きてしまっていて、そんな荒廃した土地を豊かな土壌にするための取り組みが支援できるよ。
【私たちにできることは?】
実際に活動に参加した中高生がメッセージをくれたよ♪
さら(中学2年生)
FTCJのキャンプが楽しかったことから、活動に参加し始めました。チョコレートはみなさんが買いやすい値段を決めたりパッケージデザインを決めたりと頑張りました! 中高生でも今、自分たちに出来ることはあります。みなさんにも出来ることはあります!
るり(高校1年生)
元々国際関係のボランティア活動をしたいと思っていて、仲良く楽しく活動できそうなFTCJに参加することにしました。みんなが参加出来る時間を見つけて話し合って販売したチョコレートです。コンゴ民主共和国の方々と私たちの絆と平和が込められていると思います。私も行動を起こしたいと思っても、動けなかった時期がありました。でも、たくさんの仲間がいたおかげで今、活動できています!!だから、きっとみんなできます!そう信じて、Let's take action!!
わっしー(高校3年生)
友人がFTCJに参加していたので興味を持ち、昨年度から参加をしています。児童労働やフェアトレードは遠い国のような感じがして、なかなかアクションを起こすことが難しいと感じる方も多いかもしれません。でも、商品の購入や仕組みについて調べ、周りの人に教えることで少しづつ世界が変わっていていくと思います! 中高生だからこそ得られる仲間や考え方があると思います!できることから少しずつ、社会を動かす活動を始めてみることも面白いかもしれません!
みんなが幸せになるチョコレートがいいよね!
どんなにおいしいチョコレートでも、それを作るために、子どもが学校に行けずに働かされていたら大問題。かといって、チョコレートを食べなければ済むという問題でもないよね。だって、カカオが売れなくなったら、生産する人はやっぱり困ってしまうから。
今すぐに私たちが児童労働を無くすためにできることは少ないかもしれないけれど、何とかしようと動いている人たちの活動を助けるためにも、今何が起きているのか調べてみたり、チョコレートを買う時は、フェアトレードなものを選んでみたり、今自分ができることから小さな行動を起こしてみない?
構成/田中いつき