心に隠した気持ちがここにある【「私」のための小説】
心にはあるけど、言葉にして誰かに伝えるには重すぎる気持ち。自分でも気づきたくなくて見ないふりをしてる気持ち。小説にはそんな複雑な気持ちが描かれた作品も。「この世界のどこかに理解してくれる人がいるんだ!」って前向きになるきっかけに。
なさそうであるかもしれない日常の「魔法」
みんなも悩んだり、行き詰まったりすることあるよね。ちょっとはりつめた気持ちがほわっとゆるむ短編集がこちら。久しぶりに開いたバースデーカードから聞こえてくる懐かしい声、冷蔵庫の中にいる”身を固めない”娘の想いなどなど、ありえないけどありそうな展開に、ひとつの物語を読み終わるたびニヤッとしちゃう。自分に似た登場人物とも出会えるかも。
『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』松田青子 ¥1650/中央公論新社
女どうしだからわかることも、すれちがうことも
小学校6年生のとき住んでた島で葉が出会った真以は、からかわれてた葉を助けてくれた存在。ある日、真以は島に逃げ込んだ脱獄犯の男と一緒に姿を消してしまって…。葉も母と東京に戻ってそれっきりに。大人になって偶然陶芸工房のHPで真以を見つけた葉は会いに行くことに。女性だから感じるしんどさ、傷つく経験、みんなにもわかるかも。大人になってそれとどう向き合うのか少し先をのぞいた気持ちに。
『ひきなみ』千早茜 ¥1760/KADOKAWA
「才能」はみんなを幸せにしてくれる?
性別も年齢もナゾに包まれた人気小説家のミマサカリオリ。映像化もされた大ヒットシリーズ完結前にファンに知らされたのは本人の死……。さらに16歳のファン・純恋が後を追って自殺未遂まで! その後、地方の廃校に集められたのは純恋を含むミマサカリオリのファン7人。登場人物になぞらえて集められたと思われる7人は共同生活をしながら小説の結末を探ろうとするけど、そのうちありえない事件が起きることに! 共同生活に隠された本当の目的とは?
『死にたがりの君に贈る物語』綾崎隼 ¥1870/ポプラ社
構成/古川はる香