「この瞬間」しかないものって?【青春を感じる小説】
主人公が10代や20代で、友達や仲間との関係、自分の進路や人生に悩むなど「青春み」のある新作小説を紹介。たくさんの作家さんが物語の主人公として「若者」を書きたくなるのは、やっぱりその瞬間しかない感覚とか魅力があるから。自分でも気づいてなかった「今の自分」に発見があるかも。
フロントマンを失ったバンドが選ぶ未来は?
念願のメジャーデビューを叶えて、全国ツアーも実現。まさに「これから」だったバンド[サイナス]のギター&ボーカリスト・ミツトが突然の転落死。残されたメンバーは、ミツトの兄でもある海人、ミツトの中学の同級生だった紬、紬の高校の同級生で吹奏楽部仲間だったまき、まきが大学で入ったサークルの先輩だった慈夢、そして海人の親友で一時期紬の代わりにベースを担当、その後マネージャーになった匠。それぞれのミツトへの想い、バンドへの想い、自分の人生についてが順番に語られていきます。それぞれのメンバー、バンドがたどりつく未来とは?
『空洞電車』朝倉宏景 ¥1500/双葉社
文学にかけるDKの世界を壊すのはAI⁉
詩を書いて応募するけど全然評価されない高校生の毅。親友のあたるが書く小説は新人賞の最終選考に残ってるし、小説投稿サイトでもファンがいっぱい。しかも毅が片想いしてた女子とつきあってるし! ある日、小説投稿サイトにあたるの偽アカが作られて、その正体を突き止めるとなんと「AI」!! そのうちAIが書く小説は、あたる本人が書く作品のおもしろさを超えるように……。これからリアルに起きそうなSFみある設定と、DKどうしの友情に、引き込まれます!
『坂下あたると、しじょうの宇宙』町屋良平 ¥1600/集英社
人生は「選択」の連続で進んでいく
11歳から42歳まで、さまざまな人たちが何かの「選択」に向き合う10の物語を収録した短編集。友達と組んでたバンドにギターのうまい同級生が入ることになって、リードギターからサイドギターに降格された中3の悠太が、勢いで誘った女子とデートする『逆にタワー』はまさに青春ストーリー。ほかにも「電車」にまつわる偶然に引き寄せられて出会った駿作と那美の人生を描く『君を待つ』など人生の巡り合わせについて考えさせられるものが。
『今日も町の隅で』小野寺史宜 ¥1700/KADOKAWA
構成/古川はる香