アーニャと仮初めの家族を築く、ロイドことスパイの〈黄昏〉と殺し屋のヨル。偽装家族を演じる江口拓也さんと早見沙織さんが語るTVアニメ『SPY×FAMILY』Season 3の見どころは!? ふたりの高校時代にも直撃。テストや行事の思い出、声優を目指したきっかけなど盛りだくさん! ST読者への熱いメッセージも♡

ロイド・フォージャー役 江口拓也さん

江口拓也さん
ロイド

ヨル・フォージャー役 早見沙織さん

早見沙織さん
ヨル・フォージャー

声優の夢を掴んだふたりの共通点は、“即行動”!?

――まずは、ご自身が演じるキャラクターの魅力と、Season 3の見どころを教えてください!
江口「僕が演じるロイドは完ぺきなスパイ。変装も人心掌握も得意でスマートな人間です。そんな彼の魅力は、アーニャとの出会いによって見えはじめる人間らしさ。完ぺきに見せるための工夫や葛藤が心の声になっていて、実は毎回必死なんだっていう人間味が出てきます。僕の身のまわりにも、完ぺきに見える人はいっぱいいて、大人になればなるほどそういう人たちが増えていくんです。きっとみんな裏側ではいろんな努力をしてるんだろうなって、ロイドを通して感じます。」
早見「今までのTVアニメシリーズや劇場版を経て、私が演じるヨルさんに改めて思うのは、誰とも分け隔てがないおおらかさと言いますか。みんなに同じようにまっすぐ向き合える姿が魅力的です。Season 3でヨルさんが出会う相手は、素性がなかなか明かされない謎多き人物なんです。でも、ヨルさんだからこそすんなりお喋りができて、距離を縮めることができます。細かいことを気にしすぎないところも、相手をそのまま受け止めてあげられる柔軟さにつながってるのかもしれませんね。ただ、今回の見どころはやっぱり〈黄昏〉の過去じゃないですか?」
江口「それもありますね。〈黄昏〉の幼少期から青年期までの過去が明かされていくので。なぜ今のロイドになったのか、大切な部分を描いてます。そこはぜひ注目していただきたいですね。」
早見「ヨルさんのほうは新しい重要人物と接触するので、その出会いがどんな展開を見せるのか。バレーボールの試合など、ロイドさんとアーニャさんとは別のところで起きている物語も見どころです!」

――ロイドとヨル以外で、好きなキャラクターをあげるなら?
早見「悩みますね……。」
江口「うん。みんな魅力だらけだから。そうだなぁ。やっぱりフランキーが好きですね。僕自身が人見知りで心の扉3つ閉まってて(笑)。反対にフランキーは明るくて、ポジティブなものを選んで生きてるイメージがあるので、僕もそうありたいと思います。だからか不思議なことに、お酒を飲むと僕の心の扉すべてが開放されてフランキーみたいになれたりします(笑)。誰しも心の中にフランキーをひとり住まわせると、肩の力が抜けるんじゃないかな?
早見「フランキーは愛すべき存在ですよね。有能なはずなのに、"残念かわいい"ところが親近感あります! 頑張ってるけど、うまくいかなかったり。ちょっと調子に乗っちゃって失敗したり。そこがすごく魅力的。私はダミアンが好きです。ダミアンは周囲とのかかわりの中で輝く要素が多くて。自分の意思で動くキャラクターではあるんですけど、なんだかんだ優しいので、周囲の言葉にふり回されちゃうんです。それでひとりでわ~ってパニックに陥ってしまう姿がいじらしいです。Season 3も序盤からその魅力が全開! かわいくっていやされます。
江口「うん。たしかにダミアンくんは子どもながらに背負っているものが大きくて、責任感の強いコですよね。強くいなきゃと気負っているぶん、等身大の子どもな部分が出てくるとかわいい。彼の将来が楽しみです!」 

――アフレコ現場で、お互いのすごいなと思う部分はどんなところですか?」
江口「僕、初めてオーディションに受かったのが16年前。そこで初めて早見さんと共演させていただいたんですよ。だからもう16年の仲になるんですけど。」
早見「『東のエデン』ですね!」
江口「そう。当時、僕は22歳。早見さんは10代。」
早見「18歳くらい。」
江口「早見さんの魅力って、マジでそのときと変わらないんですよ。現場での存在の仕方というか、あの頃から芯がしっかりしているところが変わらないなって。ご本人の中ではどうかわかんないけど。」
早見「そんなことないです!」
江口「いや。僕はそのときそのときで立ちふるまいを模索している部分があったんですよ。極端に人見知りだったからこそ、あの頃はもうちょっと明るくふるまわなきゃって思いがすごく強かったんです。でも慣れていくうちに、こういう自分でもいいのかもと肩の力が抜けて、今みたいなゆるく自然体でいられるようになったんですけど(笑)。早見さんはいつもナチュラルに「あ、おはようございます!」って感じでさわやか。まとってる空気が僕と違ってて、オーラがすごい人っているんだなと思ってました! そこは今でも変わらず感じるところですね。」 
早見「ありがとうございます(笑)。江口さんには年々感じることがあって。例えばアフレコでも、ロイドさんのセリフって本当に難しいのばっかりなんですよ。難しいし、その中で今回のSeason 3で言えば、現在の〈黄昏〉と過去の〈黄昏〉と、くるくると声色を変えていかなければいけないじゃないですか。『SPY×FAMILY』の現場って、テストから本番の間で「こういうふうにしてみてください」とか「このタイミングでお願いします」って音響監督さんからたくさんの指示をいただくことがあるんですけど、江口さんって、そのすべてに「はい、わかりました」ってすぐ対応されるんですよ。しかもそれはアフレコ現場だけじゃなくて、特番の撮影をするときとか、何においてもそうなんです。どんなボールが来ようが、雨が降ろうと風が吹こうと、ものすごく大きい受け皿で、サラッとスルッとこなされていくのは、江口さんにしかできない、唯一無二感があるんじゃないかなって思います。器の大きさを感じますね! 何が起きても動じないので、とても頼もしいです。」
江口「全然、動じてるんですけどね(笑)。内心ではどうしようって思いながら、なんとかやってますよ。」
早見「そんなふうには見えないので、よけいにすごいです!」

【Season 3】時折見せる人間らしさがロイドの魅力。

【Season 3】時折見せる人間らしさがロイドの魅力。

声優という職業との出会い。そのときふたりは……?

――そもそも声優を志したきっかけはなんだったんでしょう?
江口「高校1~2年生くらいの頃って、進路を決めさせられるじゃないですか。進路希望調査みたいな。特にやりたいことがなくて、1年生のときはフリーターって書いてたんです。でも高校2年生になって、テスト勉強中にずっと深夜ラジオをつけてたんですけど、あるときすごくおもしろい人が喋ってるなと思って。その人のラジオをよく聴くようになって、調べてたら、どうやら声優という職業の人がやってる。声優さんってラジオもやるんだってちょっとビックリしたんですよ。山寺宏一さんがバズーカ山寺として、ラジオパーソナリティーをやってることは知ってたんですけど、他の声優さんもラジオDJのような一面もあるんだなって。声優さんがやっているラジオを聴いてると、話し方とか言葉のチョイスが、僕の感覚と合ってたんです。それで、このかたたちと一緒に人生を過ごしていけたら楽しそうかもと思って。最初の動機は演技したいとか具体的なことではありませんでした(笑)。」
早見「周囲の人からは何か言われなかったんですか?」
江口「いや、めちゃくちゃ反応悪かったですね(笑)。友達にも「お前にできるわけない」とか言われて。今でこそ声優という職業が注目を浴びる機会は多いですけど、僕が高校生の頃まだ声優は謎に満ちた存在だったんですよ。ある意味、友達にはバカにされたし、特段、声が良かったわけでもないから、親も「絶対にできないからやめとけ」って大反対。でも、僕は天の邪鬼だから、むしろ反対されて良かったです。たぶん、あっさりOKされてたら、拍子抜けしてモチベーションが下がったかもしれません。」
早見「すごい! 逆に燃えるタイプなんですね。」
江口「頑固者でしたね。」
早見「私が声優を目指すきっかけになったのは、日本語吹き替えの映画です。小学生の高学年の頃に、家で母が見ていたオードリー・ヘップバーンさんの映画を見て、声優さんのお仕事を知りました。池田昌子さんが吹き替えをされていたんですけど、当時は声優さんって仕事をよく知らないから、海外の人も日本語を喋ってくれてるんだ~みたいに思って見てたんです(笑)。あとあと、別で日本語を被せる仕事をしているのが声優さんなんだっていうのを知って。こんな仕事があるんだと思って調べはじめたら、アニメもナレーションも、それこそラジオもやってて、歌も歌ってる。まだよくわかってないけど、すごく魅力的に見えて。そこから映画やアニメをたくさん見ているうちに、すごくおもしろそうなお仕事だと思いはじめたんです。今、私が所属してる事務所に養成所があって、その中にジュニアクラスもありまして。同じものを好きな人たちと一緒に勉強できるかもっていう、習い事みたいな気持ちで、週に1回、日曜日に養成所のレッスンを受けはじめました。ただ、最初は養成所に通いたいことを親に言えなくて。家のリビングに、雑誌の養成所の広告ページを開いて置いておいたんですよ(笑)。」 
江口「意味ありげに(笑)。」
早見「はい。そしたら母がたぶんすべてを察して「もしかしてこれに興味あるの?」って聞いてくれて、「実は……」というふうに打ち明けられました。母からは「レッスンに通うのはいいけど、自分で全部電話して申し込みの手続きをしなさい」と言われて、小6の3月に自分で申し込みました。養成所には毎年、年度末に進級審査といって、クラスが上がるかどうかの審査があるんですけど、中学2年生のときの審査でありがたいことに事務所のかたから声をかけていただいて。それがきっかけで気づいたら声優のお仕事が始まってました。でも、何にもわかってない状態でこの世界に飛び込めたのは良かったです。けっこう引っ込み思案でビビりなタイプなので、大人になってからだと、いろいろ理由つけて諦めちゃってたと思います。」

【Season 3】ヨルは重要人物に接近⁉

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【Season 3】"残念かわいい"フランキーに親近感♡

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ST読者と同じ17歳の頃、どんなふうに過ごしていた?

――STにちなんで、17歳ごろの高校時代のことも聞かせてください!
江口「正直に言うと、学校は少し苦手でした……。でも、修学旅行は楽しかったですね。ワクワクして風邪引くタイプだったんですけど、このときは大丈夫で(笑)。北海道でマンガとアニメが好きな友達と行動して、いつもと違う景色を見られたのはいい経験でした。ふだんの生活でときどきポンッと訪れる非日常っていいですよね。長野にスキー合宿行ったりもしたけど、あれは中学だったかな……。」
早見「私は学園祭実行委員をやってましたよ。」
江口「へぇ。実行委員って、どんなことするんですか?」
早見「クラスでミュージカルをすることになって、夏休み中もみんなで集まって練習して、大道具作ったり、衣装を用意したり。当時からお仕事していたので、この瞬間が尊いんだって自覚しながら青春を味わってました(笑)。」
江口「充実してますね~。僕、体育が得意科目でした。授業にちゃんと取り組めば良かったので。僕は最低限の力で成績3を取りたかったんです(笑)。大学進学っていう、要は学力を必要とする進路を選んでなかったからこそ、省エネで平和に卒業したかったんですよね。バスケ以外の球技は苦手なんですけど、それでも一生懸命やることで授業態度が評価されたと思ってます。」 
早見「ちょっとわかります。私はどっちかというと体育は苦手だったんですけど、音楽と家庭科は好きで。高度な技術が求められるというよりは、どれだけ楽しんでやってるか、積極的に参加してるかみたいなところが大事にされていた気がします。そこは江口さんと同じく、なんかこう……気持ちでいけたというか(笑)。」
江口「やっぱりそうですよね。僕、苦手だったのは化学と物理です。物理にいたっては、覚える公式が多くて無理すぎて、人生初の0点を取った科目……。これだけは絶対に正解できると思ってた問題が、解答欄をズラして書くっていうまさかのミスで……。」
早見「え!? そんなこと本当にあるんですね。」
江口「全体的に1個ずつズレてて。よくマンガやアニメに出てくるような失敗をしでかしました(笑)。ズレてなかったら6~8点はあったんです。それでも結局、悪い点には変わりないんですけど。でも高校受験のときは、ラスト半年間で塾に通ったら点数がどんどん上がったんで、やればできるほうだとは思います! がむしゃらに勉強するというよりは、いかに点数を取るか効率的に考えて取り組むほうではありましたけど。」
早見「私が好きだった科目は、音楽と家庭科以外だと、国語と英語かな。ベーシックな文系です。苦手なのは数学と理科。数学の授業中は、黒板の数式をノートに書き写すのに必死で。先生に当てられないように身を潜めて生きてました……。大学受験の追い込み時期は暗記ものに苦戦して。自分なりに見つけたのが、架空の生徒に授業をする妄想。「ここはこうで、江戸時代には……」みたいなことを、ひとりでロールプレイしてました。リビングで勉強してたので、夜お手洗いで起きてきた父親に引かれてました。ひとりでブツブツ言ってる姿を見られて(笑)。」
江口「ハハハッ。いや、いいことなんですけどね。自分で言語化すると頭に入りますから。」
早見「そうなんです(笑)。けっこう覚えられましたよ。テストの点数は、得意科目と苦手科目でわかりやすく点差がありましたけど……。」 

――最後に、17歳を生きるST読者にアドバイスをお願いします!
江口「僕が声優を目指したのが17歳くらい。当時、僕が何を考えてたかというと、5年後、10年後といった数年後の自分。声優になるために東京の専門学校に通いたかったけど、親には大反対されてたので、自分で学費を捻出しないといけなくて。しかも地元は茨城県の田舎のほうで、東京に行くにも90分、ヘタしたら2時間くらいはかかるところだったので実家から通うのも現実的じゃなかったし、東京で一人暮らしする費用も必要だったんです。でも、お金がないことを理由に諦めたくないし、10年後に「あのときこうしてればよかった」って後悔するのは絶対にイヤだったので、何か方法があるかもって調べてみたんです。それで新聞奨学生という、住み込みで新聞配達しながら学費を稼いで学校に通えるシステムを知って活用しました。今は他にも圧倒的に多くの選択肢がありますし、学生を支援するシステムもいろいろあるかと思います。困っていることやわからないことがあれば、まずは調べてみるのもテですよ。それに、向き不向きを考えるより、まずはやるかやらないかが大事だとも思ってます。「やってみたけどダメだった」なら自分を納得させられますから。何をするにも将来後悔したくないから今どう行動するか、を意識してみるのもいいかもしれないです。過去は変えられないけど、今と未来は変えられます!」
早見「17歳の頃を思い返してみると、高校生になるとだんだんまわりの同級生が、それぞれ違う道を歩みはじめることを感じはじめる時期なのかなと思って。それまでは、みんな同じように進学して、同じ授業を受けてますけど。高校から先は、選択肢がいろいろ。個々の個性がどんどん見えてくる時期ですよね。そんな中で「もっと自分がこうだったら……」とか「あの人はできているのに、なんで私はできないのかな」とか、ついついまわりと比べて葛藤したり、ときには生きづらくなることもあるかもしれないです。そういうことを感じている自分も含めて、17歳の今のあなたしか持っていない人生。私自身、生きることも、家族も環境も仕事も、いろんなことですごくもがいていた時期でした。それでも5年後10年後に必ず「あのときの自分はそれでも精いっぱい生きていたな」と思えるときが、あなたにも来るはずです。17歳というかけがえのない時間を、そのままのあなたで謳歌してください。」

【Season 3】根が優しいダミアンはいやしの存在!

【Season 3】根が優しいダミアンはいやしの存在!

TVアニメ『SPY×FAMILY』Season 3 10月4日(土)23:00よりテレ東系列ほかにて放送開始!

『SPY×FAMILY』声優・江口拓也さの画像_9

精神科医ロイド・フォージャーは、実は凄腕スパイ。任務のため仮初めの家族を作ることになったが、彼が出会った娘・アーニャは他人の心が読める超能力者、母・ヨルは凄腕の殺し屋、番犬・ボンドは未来予知犬だった! 3人と1匹がそれぞれに素顔を隠して過ごす日々をときにコミカルに、ときにシリアスなバトルも描いた大人気作品! 原作マンガは『少年ジャンプ+』で連載中!

TVアニメ『SPY×FAMILY』Season 3がスタートするよ! みんな絶対チェック♡

声優
江口拓也

えぐち・たくや●5月22日生まれ、茨城県出身。2008年にTVアニメの声優デビュー。ロイド役のほか、主な作品は『東京リベンジャーズ』半間修二役、『マッシュル-MASHLE-』ドット・バレット役、『ハニーレモンソーダ』緑先生役など。

声優
早見沙織

はやみ・さおり●5月29日生まれ、東京都出身。2007年にTVアニメの声優デビュー。ヨル役のほか主な作品は『魔法つかいプリキュア!』花海ことは/キュアフェリーチェ役、『ONE PIECE』ヤマト役、『鬼滅の刃』胡蝶しのぶ役など。

取材・文/上村祐子 小波津遼子

©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会