容姿が似ている女子中学生のハル(星乃あんな)とウララ(河村ここあ)がなり代わって、離婚して出て行ったハルの父親(吉沢 悠)に10年ぶりに会いに行く様子を描いた短編映画『はるうらら』。W主演を務めた『Seventeen』モデルの河村ここあに、映画の内容やお芝居の楽しさについてインタビューしてきたよ!

全員が家族のような監督の自主短編作品だったからこそ、初映画にじっくり向き合えた

河村ここあ

――初めて脚本を読んだ時の感想を教えて。

「あらすじだけを聞くと、複雑な人間関係を描いた難しそうな作品に感じると思います。わたしも初めて台本を読んだときは、友達のお父さんに自分が娘だと嘘をついて会いにいくという未体験の設定に戸惑いました。

 

でも、ありがたいことに今回は外山文治監督の自主制作映画だったので、役について理解できない点は監督に詳しく伺いながら理解を深めていけました。上映時間も一般的な映画よりも短い20分作品ということで、撮影期間は3〜4日。おそらく通常だったら現場で役について監督とじっくり話し合う時間をとりにくいと思うのですが、今回は意見を交換し合い、ときには撮影場所など撮り方を変えながら納得するまで挑戦することができました。

 

過去にドラマ出演の経験はありましたが、映画出演は今回が初めて。撮影に入る前は、現場の進め方に違いがあるのかなど不安もあったけれど、監督はじめ自主制作ならではのアットホームなチームのおかげで自然体で演じることができた気がします!」

河村ここあ

――W主演の星乃あんなさんとの空気感もカギになる作品だけれど、星乃さんとはどのように打ち解けていったの?

「あんなちゃんはわたしよりも2歳年下。わたしも人見知りですが、初対面の挨拶であんなちゃんも人見知りそうだな〜と感じ、勇気を出してお姉さんのわたしから話しかけました(笑)。なごやかな撮影現場に後押しされたこともあり、想像以上に仲良くなれて嬉しかったー! 今では別の現場で偶然会ったときにあんなちゃんから駆け寄ってきてくれるほど仲のよい関係性に。素直で笑顔がかわいくてキュンキュンしっぱなしです♡」

――ハルとウララの二人のシーンでは、仲がいいだけではない気まずい雰囲気のシーンも。緊張感のある撮影で意識したことを教えて。

「あんなちゃんが演じるハルのお父さん(吉沢 悠)とのシーンは、表情や声色など自分自身のお芝居についても何が正解か迷いましたし、あんなちゃんとの掛け合いや空気感が大事なシーンだったので、撮影当日は珍しく二人の間に無言の時間が流れていました。

 

他のシーンでは理解が追いつかない気持ちは監督に質問していましたが、ハルとウララでお父さんに会いにいくシーンだけは監督より先にあんなちゃんに相談し、お互いの気持ちを深めていきました。監督も、わたしたち二人で出した答えを受け止めてくれたので、現場で無言ではあったけれど、不安とは異なる気持ちで演じられたと思います」

中学時代の推しは女性の先生♡ あの頃から推し活に励んでいました(笑)

河村ここあ

――作中では中学卒業前のひとときが描かれているけれど、ここあの中学卒業前の思い出は?

「中学時代に所属していた剣道部の後輩に謝恩会を開いてもらい、手紙や色紙をもらったことは今でも記憶に残っています! 初めての後輩だったのですごく嬉しかったな〜。

 

わたしらしい思い出で言うと……女性の推しの先生がおりまして(笑)。卒業式の日は、先生のスタイルが袴派とスーツ派で分かれるので、なんとしてもその先生の袴姿が見たくて、事前に『他の先生はみんな袴を着るらしいですよ!』と伝え袴派に誘導しました(笑)。

 

その甲斐あって(?)無事に推しの和装を目に焼きつけることに成功! ST内でもわたくし、STモデル・秋田汐梨さんを推しておりますが、オタク心は中学時代から健在でした!」

――推しごと記録ありがとう(笑)。この春からここあもついにLJK。最近は学校でどのように過ごしてる?

「休み時間は、読書三昧! 全国の書店員さんが『いちばん売りたい本』を投票で選ぶ文学賞・本屋大賞に何度もノミネートされている作家・青山美智子さんの短編小説が大好きで、少しずつ読み進めています。

 

青山さんの短編小説で描かれる世界は、主婦や女子高生の何気ない毎日だったり、小さな町の図書館を舞台にしていたり。わたしの毎日にスッと溶け込んでも違和感がないほど日常的。そんな中で起きる小さな奇跡にワクワクし、どんどんのめり込んでいけるんです!

 

作品を超えて登場人物が他の作品に登場することもあるから、一作品読むと別の作品もついつい読みたくなり止まらない! 漫画も好きですが、小説のおもしろさに気づけたのは青山さんのおかげです」

作品や役を追求すればするほど、多くの人に観てほしいという「オタク心」が湧いてくる

河村ここあ

――俳優として年々経験値を高めているここあ。STモデル歴も3年になりモデルとしても成長しているけれど、俳優とモデルの撮影現場では心持ちに違いはある?

「もちろんあります! STの撮影現場は共演モデルさんもスタッフさんも顔馴染みの方が多く、おこがましいかもしれないけれどわたしにとっては実家のような場所。一方で映像の現場はスタッフさんもキャストさんもはじめましての方ばかり。わたしが幼い頃から第一線で活躍されている方達と、初対面で一緒にお仕事をすることには毎回緊張します。

 

それでも、お芝居の経験が増えるごとに俳優としての仕事を好きになっている自分がいるんです。『演技が楽しい』とか、『お芝居が向いている』とか、自分ではまだそこまでは思えないけれど……単純に映像作品が好きなんですよね。

 

芸能のお仕事を始める前、地元・広島に住んでいた頃からわたしは大のドラマっ子で、毎週一話ずつ連続ドラマを観ることを楽しみに過ごしていました。ワンクールの3ヵ月間、回を重ねるごとに作品を好きになるのと同様に、お芝居の仕事で役作りをし、作品を通してスタッフさんが伝えたいこと、わたし自身が届けたい思いを突き詰めていくと、持ち前の『オタク心』に火がついて、この作品を一番推しているのはわたしだ!って気持ちになっちゃう(笑)。そこからは、視聴者さんにも良さを届けたくて広報活動しなきゃってウズウズが止まらないんです!

 

今回の映画『はるうらら』のように最初は演じる役について理解ができなくても、『なんでなんで?』って知りたくなるし、たとえ役に共感できなかったとしても作品の中での言動に発見があったら自分のお芝居で届けたくなるんですよね」

河村ここあ

――俳優の仕事においても「オタクマインド」が活きているんだね!

「オタクマインドを仕事に活かしていいんだと思えたのはSTのおかげなんですよ! モデルを始める前から、好きなものは狭く深く追求するタイプで、時には周囲からマニアックだと思われることもあったけれど、STの撮影現場で自分の好きなことを話すとスタッフさんは『いいじゃん!』と個性として受け入れてくれました。肯定してくれるだけでなく、好きが企画になることも!! 

他人と異なることは『変わっている』のではなくて、『強み』なんだと気づいてから、オタクという自分だけの個性を仕事の原動力にすることに抵抗がなくなり視野が広がりました」

河村ここあ

――現在17歳・LJKのここあ。姉モとして今後STでやってみたいことを教えて。

「3年前、STモデルの仲間入りをした中学3年のタイミングで、スタッフさんに『ここあが17歳(Seventeen)になったときには、先輩たちのようにメディアを引っ張っていく存在になっていてほしい』という言葉をいただき、ひとときも忘れることなく活動してきました。STモデルにとって17歳はそれほど大切な年齢。

 

今年の6月には18歳になりますが、17歳になるまでに推し活など自分のキャラクターを活かした企画に出演できたことが嬉しい! LJKの一年はオリジナリティを出しつつ、制服企画など女子高生のリアルを届けることを全力で楽しみたいです」

――俳優として演じてみたい役についても聞かせて!

「今作の映画『はるうらら』では中学生役として制服を着用しましたが、やっぱり今のわたしならではの等身大の役には興味があります。高校が舞台の作品でも制服を着てお芝居をしたい! 欲を言えるなら……漫画の実写化でメインキャストを演じてみたいな♡

 

沼にハマるのが得意なので(笑)、漫画原作で読み込んだ作品の良さを伝えるのにも向いていると自負しています! 中でも演じてみたいのは、週刊少年ジャンプで連載中の漫画『アオのハコ』のメインキャスト。バスケ部所属のヒロインと、新体操部所属の準ヒロインの役をいつでも演じられるように、日々バスケと柔軟に励んでいます(笑)。

 

今後、わたしの"好き"を連鎖して広められるように……まずは心を込めて演じた映画『はるうらら』を大切に届けたいです! 長年会っていなかったお父さんに会いにいくというストーリーを聞くと難しそうに感じる人もいるかもしれませんが、その前後で演じた友達や家族とのぎこちなさ、心の引っかかりを解消していく中で関係を再構築していく姿はどんな人でも共感できるはず。学生さん同士でも、家族とでも、もちろん一人でじっくりとでも良いので観てくださったら嬉しいです」

河村ここあ サムネイル

映画『はるうらら』  5月16日(金)より全国順次公開中!

映画『はるうらら』ポスター

中学卒業が迫るある日、SNSで偶然ハルが長年会っていなかった父親を見つけるところから物語がスタート。顔や髪型が似ているハルと、ここあが演じたウララがお互いになり代わってお父さんに会いにいくという内容を20分という短い上映時間に凝縮。

映画『はるうらら」HP
『Seventeen』専属モデル
河村ここあ

2007年6月16日生まれ、広島県出身。中学3年のとき「ミスセブンティーン2022」を受賞。2022年8月より専属モデルに。近年はドラマ、舞台出演など俳優としても活躍の幅を広げ、待機作に映画『青春ゲシュタルト崩壊』(6月13日公開)がある。

撮影/浜村菜月(LOVABLE) スタイリング/前田涼子 ヘア&メイク/サイオチアキ(Lila) 取材・文/宮田彩加

ライター
宮田彩加